
産業排水の凝集不良:原因を工程別に見極める
要点 産業排水の凝集状態が悪化したら、薬剤を増量する前に、どの工程から変化したかを見極めます。 流入水、急速混和後、フロック形成後、沈殿または浮上分離後の水を比べてください。pH、アルカリ度、固形分、実際の薬注量を確認し、同じ排水を使ったジャーテストで評価基準を明確にします。ジャーテストは良好でも実設備の処理水が改善しなければ、薬注設備、フロックにかかるせん断、分離装置を確認します。両方とも不良なら、水質に対する薬剤の適合性と添加順序を見直します。その結果をもとにPACやポリマーの試験を選び、達成すべき処理水質を定めます。
フロックが弱い、処理水が濁るときの確認順序
まず現場で起きている変化を見ます。フロックが弱い、色が処理水に残る、濁度が上がる、COD除去が安定しない、汚泥を扱いにくい――どれが問題でしょうか。現在の流入水と運転条件を安定運転時と比べ、薬注、急速混和、フロック形成、固液分離のどこから差が出たかを確認します。そうすれば、設備条件を調整すべきか、別の凝集剤と高分子凝集剤の組み合わせを試すべきか判断できます。

現象を工程ごとに切り分ける
| 観察した現象 | 確認する項目 | 次の対応 |
|---|---|---|
| フロックができず、水が濁ったまま | 流入水のpH、アルカリ度、温度、導電率、色度・濁度、薬注ポンプの実流量、薬剤の種類と、条件を一つずつ変えたジャーテスト。 | 凝集剤を変える前に、水質と実際に投入された薬剤量を確認します。 |
| フロックはできるが、後段で細かく砕ける | 工程ごとの混和強度と時間、ポンプと注入位置、移送時のせん断、返送流、各工程の前後でのフロックの状態。 | 主凝集剤を替える前に、混和条件と移送時のせん断を確認します。 |
| フロックができても処理水に流出する | 沈降・浮上挙動、表面負荷、汚泥界面、返送流と空気供給、短絡流の兆候、固形分負荷。 | 薬剤の条件とともに、分離装置の水理条件と固形分負荷を確認します。 |
| 色度は下がったが、CODは目標に達しない | ろ過前後のCODなど合意した測定区分、色度の分析法、溶存分と粒子分の違い、後段処理の役割。 | CODの各区分と後段処理の目標を、色度とは分けて評価します。 |
| 増量すると処理結果が悪くなる | 反復試験による添加量と結果の関係、処理後のpH・アルカリ度、適切な場合の残留量や電荷、汚泥量、薬剤の調製状態。 | 添加量と結果の全体像、処理後pHを使って原因を絞ります。 |
色度・濁度・CODが示すことの違い
| 評価項目 | 何が分かるか | 結果の使い方 |
|---|---|---|
| 色 | 選択した測定法による見掛け色度または真色度と、処理前後の変化。 | 比較する試料には同じ色度測定法とろ過条件を使い、CODは別に評価します。 |
| 濁度 | 選択した測定法で捉える、懸濁物質やコロイド粒子による光散乱。 | 対策を選ぶときは、濁度と固形分・粒子の観察を合わせて判断します。 |
| COD | 所定の分析法で測る、酸化可能な成分の化学的酸素要求量。 | 溶存分と粒子分を分けて把握し、後段処理を検討します。 |
| フロック観察 | 工程ごとに記録したフロックの形成、強さ、沈降・浮上しやすさ。 | フロックの状態を処理水質と汚泥処理の目標に照らします。 |
同じ条件で測定値を比較する
測定値を比べる際は、採水場所と時刻、保存方法、ろ過の有無、分析法をそろえて記録します。ろ過した上澄みの色度を、未ろ過の設備サンプルとそのまま比較することはできません。CODの溶存・粒子分や、沈降時間・流出フロックの影響を受ける濁度も同様です。検出限界、希釈、試料前処理も残してください。流入水の変動が大きい場合は、単発の採水結果だけで運転全体を代表させず、設備の手順に沿って反復採水や混合試料を使います。こうしておけば、次のジャーテストと実設備の結果を同じ条件で確かめられます。
採水から対策決定まで
- 変化の経過を記録します。 設定値を変える前に、製造工程、排水源と流量、返送流、pH調整、凝集剤・ポリマーのロット、薬剤調製バッチ、設備変更を記録します。
- 採水点を明確にします。 流入水、急速混和後、フロック形成後、沈殿または浮上分離後の水を対応させて採取します。時刻、温度、ろ過の有無、保存方法、分析法を記録します。
- 薬剤の実投入量を確認します。 薬剤の種類、保管状態、調製または希釈、ポンプの校正、バルブ、注入位置、実流量に連動した薬注を確認します。設定上の注入量だけでは、薬剤が実際にその量で投入されたとは言えません。
- 一度に変える条件は一つにします。 EPA ガイダンスでは、ジャーテストを現場固有のシミュレーションとして扱います。代表的なサンプル、制御された混合、pH/アルカリ度、および定義された評価項目は、別のプラントのレシピをコピーするよりも有用です。
- 薬剤の問題と固液分離の問題を分けます。 フロックがどの工程で初めて崩れるか観察します。ジャーテストで良好でも、沈殿槽、DAF、ろ過器、返送流の条件が異なれば固形分が処理水に流出します。
- 合格条件を先に決めます。 変更を採用する前に、処理水質、汚泥の状態、運転しやすさ、再現性の基準を定めます。実運転を代表する時間が経ってから再確認してください。

薬剤の検討に必要な情報
| 含める | なぜそれが重要なのか |
|---|---|
| 採水日付きの流入水・処理水分析結果 | 異常の兆候を実際の排水組成と測定法に結び付けます。 |
| 工程図と採水点 | 急速混和、フロック形成、固液分離のどこで変化したかを示します。 |
| 薬剤名、TDS/SDS/COA、ロット情報 | 製品の特定、安全情報、ロット追跡に役立ちます。ただし、自社排水での性能試験に代わるものではありません。 |
| 薬剤の調製・薬注・校正記録 | 薬剤が適切に調製され、計画した位置へ実際に投入されたかを確かめます。 |
| ジャーテストの方法と全結果 | 失敗したジャーを隠すことなく、サンプル、シーケンス、pH、混合、評価項目を比較できます。 |
| 実設備の変化と合格基準 | 見た目だけの一時的な改善と、運転中に再現する改善を区別します。 |
まず凝集剤・高分子凝集剤の製品群を比較し、排水処理の用途ページで各薬剤の位置づけを確認します。PACとPAMのジャーテスト動画では添加の流れを確認できます。排水の分析値、現在の薬剤、分離目標をお知らせください。試験条件を一緒に検討します。
よくある質問
排水でフロックができないのはなぜですか?
排水組成の変化、pHやアルカリ度の不一致、薬剤の取り違えや注入不足、調製不良、急速混和不足、添加順序、ポリマーの不適合、妨害物質などが考えられます。決めつけて増量する前に、代表試料と条件をそろえた試験で原因を絞ってください。
凝集剤と沈殿槽のどちらに問題があるか、どう見分けますか?
代表試料によるジャーテストと、設備内の複数地点の試料・観察結果を比べます。ジャーテストで良好でも設備の分離が悪ければ、実薬注量、水理条件、せん断、汚泥界面、沈殿槽や浮上分離の条件を確認します。両方で不良なら、排水組成、pH、薬剤の適合性と添加順序を調べます。
凝集後の濁度が高いのは、常に薬剤不足が原因ですか?
いいえ。薬剤の過不足、pHやアルカリ度の変動、混和不良、フロックの破壊、固形分の流出、過負荷、評価基準のずれでも濁度は高くなります。添加量を変えたジャーテストと工程別の採水で確認してください。
凝集で排水中のCODをすべて除去できますか?
排水の種類を問わず『すべて除去できる』とは言えません。凝集で粒子やコロイドに由来するCODの一部を除去できても、溶存の酸化可能成分は残り得ます。COD分析法、ろ過条件、後段処理の目標を踏まえて結果を判断します。
凝集剤やポリマーを変える前に何を伝えればよいですか?
流入水・処理水の採水日付き分析結果、排水源と工程変更の履歴、流量と返送条件、採水点の図、薬剤名とロット、調製・薬注記録、ジャーテストの方法と結果、設備の制約、事前に合意した合格基準を共有してください。
執筆・確認
執筆:VCYCLETECH技術チーム。薬剤の候補は、自社の排水、設備、運転目標に照らして検討してください。最終選定には該当グレードの最新資料と代表試料による試験を用います。
